※2012年4月2日 「万座毛のキングシーサー」プレゼント抽選結果発表を追記しました。
去る2月25日(土)、デザイナー・美術監督の井口昭彦さんを特別ゲストにお迎えし、第4回目の
「特撮大百科トークライブ」を開催させていただきました。
当日は小雨そぼ降るなか、たくさんのお客様にご来場を賜り誠にありがとうございました。
お陰さまで小さな会場は満席札止め状態の大盛況となりました。
スタッフ一同、あらためて厚く御礼申し上げます。
それでは、いつものように当日の模様をダイジェストでご報告させていただきます。
映像・特撮美術の匠・井口昭彦さん登場!
ウルトラシリーズをはじめ、東宝特撮映画など数々の映画やテレビ作品で美術を担当され、マットアロー、プリズ魔、ベロクロン、バキシム、メカゴジラ、キングシーサーなど数多名キャラクターのデザインも手掛けられた、デザイナー・美術監督の井口昭彦さん。
今回は井口さんから「怪獣デザイン」の秘話をお伺いするということで、トークの聞き手を務めるのは、怪獣怪人デザインに詳しく、
「百花繚乱ー上之巻ー戦隊怪人デザイン大艦1975~1995」のメインライターでもあり、井口昭彦さんに深いリスペクトを捧げるガイガン山崎さんと、怪獣ファンとしても知られる漫画家の山本サトシさん(
ポケットモンスターSPECIALほか)、そして司会の畑山敦紀さんのお三方。あの前代未聞の珍イベント
「権威なき怪獣映画クイズ王決定戦」出演者、MCとしてお馴染みの面々ですね。
井口さんが会場に到着されるまでの間、ガイガン山崎さんからは「百化繚乱」のご紹介も。
35作品に及ぶ東映スーパー戦隊シリーズに登場した全ての怪人デザイン画を網羅しようというこの壮大な企画。大阪・寝屋川では愛すべきおっちょこちょいキャラのガイ山さんですが、仕事の方はさすがに筋金入り。これはまさに大著!絶賛発売中です!
そんな感じで会場の雰囲気が温まった頃、満場の拍手に包まれて、いよいよ今回のメインゲストである井口昭彦さんのご登場です。
この日のために遠路関東からお越しいただいた井口さん。
ご記憶の限りで、出来るだけたくさんの思い出話を語っていただけるとのことで、会場のお客さんや聞き手の三人も、その一言一言にじっくりと耳を傾けます。
ウルトラシリーズのこと。そして・・・覆る定説!
トークは、初期に関わられた「マイティジャック」などの円谷作品のことから、ご自身が担当された「ウルトラマンタロウ」のタイトルバック映像のことまで、特撮美術の現場でのお仕事に関する思い出話からスタート。
司会の畑山さんや、聞き手のガイガン山崎さんが用意してきた山のような資料を見ながら当時のお仕事ぶりが次々と紐解かれていきます。
基地から次々とZATメカが発進していくお馴染みの「タロウ」オープニングは、かなり大掛かりなセットを組んで製作されたとのこと。1年間を通じて毎週放映される映像ということで、目一杯贅沢な作りになっているそうです。よくみればセットの其処此処に日用品が工夫して使われているという裏話も披露されました。
続いては「帰ってきたウルトラマン」におけるキャラクターデザインのお話。
MATのメインメカであるマットアローシリーズは丸い形状のキャノピーが特徴的。このコクピットの実物大セットを作る際に、透明部分の曲面を表現するのは大変な難事との事で、当時はアクリルに熱を加えて曲げ加工したり、一度傷が付くと丸ごと取り替えなければならなかったことなど、デザインを立体化する苦労話も語られました。
怪獣デザインに関しては、例えばバルダック星人はテレビに登場したものではなく、もっと雪男然としたデザインを提案されていたこと(実際の着ぐるみは井口さんのデザインを反映したものではない)など、一般に井口さん担当作と言われているキャラクターが必ずしもご本人の作ではなかったことも含め、意外な事実が次々と明らかにされていきました。
井口さんにとって、「帰ってきたウルトラマン」で印象に残っている怪獣のひとつは、業界の先輩でもあり仕事仲間でもあった池谷仙克さんがデザインされたツインテール。
「これを最初に見た時は、やられた!と思いましたよ。凄いデザインですよね。これに負けないユニークな怪獣を作りたい、と思いました」
プリズ魔も特によく覚えている、と井口さん。
「これは俳優の岸田森さんが脚本を担当する、ということでスタッフ皆が一生懸命取り組んだ覚えがありますね。森さんが考えたユニークな設定に応えるために頑張りました」
複雑な多面体で構成され、表情がないオブジェのような異色の怪獣キャラクター・プリズ魔には、デザイン的な「目鼻」を感じさせるため、頂点にブロック状になった一対の突起物をあしらうなど、その意匠に様々な工夫が凝らされているそうです。井口さんのアイデアでは、もっと全体が発光するイメージだったとのこと。
「ウルトラマンA」初期の超獣は、生物と兵器が一体化したというユニークな設定。
井口さんが担当したベロクロンやカメレキング、パキシムなどの超獣は、そういう設定を踏まえながらも、メカニカルなイメージにとらわれないキャラクターデザインがなされています。
超獣大好きなガイガン山崎さん、ここぞとばかりに質問をぶつけます。
ガイガン山崎「ベロクロンやバキシムって、いかにも兵器を詰め込んでそうな重量感溢れ
るルックスですけど、その一方で背中にミサイル発射台を載せるようなわかりやすいデザ
インアプローチではないところがミソというか……」
井口さん「あっ、なるほど。その手があったか!(笑)」
ガイガン山崎「う・・・。でもホラ、カメレキングは、お腹に回転ノコが付いてるじゃないですか!」
井口さん「いや、これはあれだよ、ゴジラの背中に付いてるヤツ。あれを前に持ってきたの」
ガイガン山崎「背(腹)びれだったんですか?!」
井口さん「お腹にノコギリはないだろう、常識的に考えて(笑)」
カラフルで派手な怪獣というイメージの強い超獣ですが、井口さんが手掛けたものはどちらかというとシルエットがはっきりしていて、シンプルで力強いものが多かったようです。
一連の仕事では、
造型家・村瀬継蔵さんが代表を務めるツエニーの造型も、素晴らしいものだったと語る井口さん。造型作家に仕上げを託すデザイナーの思いがトークの端々に垣間見えます。
井口さんの軽妙な語り口と、ガイガン山崎さんとの掛け合いも楽しい今回のイベントですが、やがて話題は、東宝特撮のゴジラシリーズとの関わりも深い、「流星人間ゾーン」に。レーザーディスクの解説書にも描き下ろしイラストを提供されていた井口さんから、恐獣デザインの裏話などをお聞きしようと話を振ったガイガン山崎さんでしたが…。
・・・とのことでした(笑)
ロボット怪獣の最高峰、メカゴジラ誕生秘話
ほかにも井口さんが関っておられたという、中国で製作された特撮テレビドラマ『五龍奇劍士メタルカイザー』(諸事情で製作中止)の話題などもはさみつつ、第二部は東宝特撮映画に登場した怪獣キャラクターの話題に。
ここからは東宝特撮に詳しい、特撮ライターであり弊社代表も務める中村哲も話に加わり、まずはかつて井口さんとも一緒にお仕事をされ、昨年末に亡くなられたカメラマンの富岡素敬(もとよし)さんと特殊効果の久米攻(おさむ)さんの追悼ビデオを上映しました。(この映像はお二人の在りし日を偲んで催された〈偲ぶ会〉で上映されたもので、呼びかけ人である川北紘一特技監督の発案で製作されたプライベート作品ですが、今回川北監督のご厚意で特別に上映させていただきました)
先日訃報がもたらされた特殊美術の
井上泰幸さんを含め、昭和の日本映画を支えた功労者達が、僅かな間に相次いで亡くなられています。
当時を懐かしむような表情でビデオをご覧になった井口さんからは、「みなさん素晴らしい人物で、良い思い出ばかりが残っています」と、万感の思いが込められた追悼のコメントを頂戴しました。
さて、井口さんが東宝で怪獣デザインを手掛けられたのは、「ゴジラ対メカゴジラ」「ノストラダムスの大予言」以降ということで、これまで書籍などでは井口さんの作ではないかと言われていた「ゴジラ対メガロ」のメガロやジェットジャガーについては、この場でもあらためてご本人の口から関与が否定されました。
メカゴジラは、田中友幸プロデューサーからの依頼で、旅館に3日間缶詰になってデザインを仕上げたとのことで、まず思いつく限りの武器を搭載したロボット怪獣のアイデアを考案するところからキャラクター作りが始まったそうです。(各武器などの設定は後付け)
ゴジラをモチーフとしながら、敢えてメカゴジラの尻尾を短くした理由は、空を飛ぶ時に尾翼のような役割を持たせたかったことと、ロボットの硬質感を感じさせるため、尻尾が長くなることで着ぐるみにシワが生じるのを防ぐという狙いがあったとのこと。
井口さんは実際に出来上がった着ぐるみもご覧になられたそうですが、あの印象的な虹色の輝きを表現するために、メカゴジラの体にはパールの塗料が吹き付けられていたそうです。
キングシーサーは、沖縄伝統の魔除け像であるシーサーの置物を怪獣にアレンジ。
デザイン段階では、耳が動くギミックの指定は無かったそうですが、出来上がった着ぐるみの出来が良いのに感心した思い出があるそうです。
チタノザウルスのカラフルな彩色や生物感溢れるデザインについては、ご自身の趣味でもある熱帯魚のイメージが投影されていると述懐されていました。チタノザウルスの尻尾のデザインにもそうした「熱帯魚」のヒレのような意匠が見てとれます。
井口さんが東宝特撮でもうひとつ印象深い仕事だったと仰るのが「ノストラダムスの大予言」に登場したキャラクターたち。
劇中に登場する、公害で巨大化したナメクジ、ジャングルの怪植物のデザインも手掛けられとのことですが、とりわけ映画のラストに登場する軟体人間がご自身でも気に入っておられるそうです。
軟体人間は着ぐるみを着た子役が演じたキャラクターですが、痩せた体躯を表現するために、膝の部分を誇張して大きくデザインすることで、着ぐるみの「ひと回り太った」感じが上手く払拭出来たとのこと。着ぐるみそのものも、一見して背中のファスナーがわからない工夫が施されており、これには大変感動したということでした。(造型担当は当時東宝特美の
安丸信行さん)
今回のトークショーでは、「ウルトラマンネオス」や雨宮慶太監督作品など、井口さんが関わられた諸作品についても少しずつお話をお伺いすることは出来たのですが、特撮作品だけにテーマを絞ってさえ、その全てのお仕事を語っていただくには4時間のロングトークでもまだまだ時間が足りず、駆け足でその軌跡を追うという忙しないイベント構成になってしまいました。
昭和の特撮作品の再評価が盛んになり始めた80年代初頭。
僅かな資料と記憶だけを頼りに探求を続けて来た先人達の功績は素晴らしいものですが、こうしたイベントなどを通じて、直接ご本人からお話をお伺い出来る時代になり、徐々にに新しい事実が見えてきたような気がします。
これまで井口さんの作品だとばかり考えられて来たキャラクターデザインが、ご本人から実はそうではなかった、という証言を得る事で、逆にこれまで漠然としか見えていなかった「井口デザイン」の本質が浮き彫りになってきたことも今回のイベントの大きな収穫でした。
“ぼくらの時代のカッコいい”を作った名デザイナー・井口昭彦さんの真価、その検証は実はまだ始まったばかりなのかも知れません。井口さんが手掛けて来られた膨大な数のお仕事をより深く掘り下げ、より広く紹介していく作業は、ガイガン山崎さんら新しい世代のライターさんに託された大仕事なのでしょう。
井口昭彦さん、貴重なお話をありがとうございました!
そして、最後にお約束のこれ(笑)
「ガイガン山崎さん、メカゴジラの武器を4つお答えください!」
「うー、うー、あー!ネ、ネネネ、ネオディフェンスバリヤー!」(←やっぱりちょっと間違えている)
イベントではこちらの宣伝コーナーも。
只今絶賛発売中の最新ムック
「平成ゴジラパーフェクション」。
メインライターの一人である圓山剛士さんから、聞いて得するこだわりポイントの紹介。
熱すぎる平成ゴジラ世代が作った熱すぎる入魂の一冊。未読の方は是非!
というわけで
こちらもお約束のプレゼントコーナー。
またまた長々と書かれたブログを最後まで読んでいただいた方に、イベントグッズのプレゼント。
今回の景品は、当日の入場者プレゼント、
「ゴジラオーナメント特撮大百科 万座毛のキングシーサー」(販促・非売品)を、
抽選で5名様に進呈いたします。
ご希望の方は、【お名前】【お電話番号】【景品ご送付先】
【当選発表して差し支えないハンドルネーム】をご明記のうえ、
株式会社キャスト「特撮大百科トークライブ4プレゼント係」までメールをお送りください。
【宛先 info@cast-web.net 】
ご応募の締切は2012年3月31日(土)PM11時到着分まで。
抽選結果とお届け予定日は4月1日(日)当ブログに「追記」として発表いたします。
※事情により抽選結果発表を4月2日に変更させていただきました。申し訳ございません。
★当選発表!!(2012年4月2日追記)
特撮大百科トークライブ4プレゼントに沢山のご応募ありがとうございました。
抽選の結果を発表させていただきます。
※抽選はブラインドボックスを使い、弊社スタッフによってくじ引きさせていただきました。
もっちゃんさん/MIPOTAROさん/つっちさん/竜胆さん/ミキゴジ57さん (順不同)
当選された方、おめでとうございました!
景品は2012年4月末日までの間で発送させていただきます。
ご応募いただいた皆様、またの機会をお楽しみに!
特撮関連イベント・アイテム情報=============================
※お問合せは劇場・各主催団体まで
●「特撮大百科トークライブ4」のゲスト・井口昭彦さんのご子息・高橋創さんも
スタッフとして参加!
新鋭おかひでき監督が贈る、「誰もみたことのないウルトラマン」
最新映画「ウルトラマンサーガ」
いよいよ3月24日(土)ロードショー!!
僕らにはまだ、輝く希望がある!!
●3月11日(日)
東京都墨田区みどりコミュニティーセンター4F多目的ホール
創立30周年を迎えた老舗特撮ファンクラブ「日本特撮ファンクラブG」主催のイベント、
【緯度G大作戦2012】開催決定!
今回のゲストは円谷プロ作品を中心に数多くの作品を手掛けた名匠・佐川和夫特技監督!
元祖ちびっ子怪獣博士・原坂一郎さんの楽しいトークショーも併催!
●5月3日(木)4日(金)
神奈川県川崎市 シネマバー ザ・グリソムギャング
ゴールデンウィークはグリソムギャングで黄金竜まつり!
中野昭慶、川北紘一の二大特技監督や、キングギドラを作った男・村瀬継蔵さん、
東宝特撮映画でお馴染みの名パイプレーヤー加藤茂雄さんも来場!
超豪華ゲストのGW特別企画
【「三大怪獣 地球最大の決戦」上映&トークイベント】
現在ご予約受付中!
残席限りあり。急げギドラファン!
※主催者様からの情報によると、5月3日のプログラムは予約が定員に達したとのことです。
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★井口昭彦さんデザイン・メカゴジラ関連商品も販売中!特撮大百科の株式会社キャストホームページはこちら。
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